ハラプリのたわごと

PTハラプリのたわごと② :「腰痛の運動療法」②

Chapt.2

腰痛を減弱させるための運動療法について、基本的な方針はたった2つ。

1つは「良い姿勢を保つ」、もうひとつは「股関節を柔らかくする」

言っていることがひどく簡単すぎて、引いちゃってる人もいると思います。

いい姿勢だと、なぜ、腰痛が減弱するのでしょうか。股関節の硬さが腰痛になぜ影響するのでしょうか?

「たわごと」なので、気楽に聞いてください。

【2-1 不良姿勢による腰痛について】

まず、姿勢から考えましょう。

ご存知のとおり、人間の脊柱はS字カーブを描いています。

これは、ヒトが重力下で運動を行うにあたって、脊髄や脳に加わる衝撃を吸収し、なおかつ敏捷に動くためです。

しかし、人間、歳をとってくると、だんだん背中が丸まってきます。

歳をとると、と書きましたが、近年は若い人だってそうです。

骨盤が後傾し、脊柱が全体的に屈曲位になり、あごが前に突き出た姿勢、こんな姿勢は、たいてい若年者です。

座ってパソコン仕事をしたり、スマホをいじっている時間が長くなってきた影響でしょう。

仕事をしていると、または家事をしていると、だんだん「じーん」と痛くなってくる。重くなってくる。。。

そんな、医者に行くほどではないけど、辛い痛みが起こってくるようです。

不良姿勢による痛みは、(他に痛みを出す脊柱の疾患がなければ)、鈍い痛みを訴えることが多いように思います。

整形外科に行っても、画像上は何ともないし、もちろん、理学検査でもなんの所見がない場合がほとんどです。

【2-2.筋や筋膜から生じる痛み】

不良姿勢をとる人が、よく、次のように痛みを訴えるのを聞きます。

「背中がズーンと重くなる」
「縦に広がっていくような鈍痛」
「背中から肩甲骨周りまで、広い範囲が痛くなる、ひどいときは首も痛い」

痛みの発生している部位が、背部の脊柱起立筋(棘筋や最長筋、腸肋筋など)に沿っている場合は、筋や筋膜が発生させている痛み、もしくは重さと捉えることができます。

痛みが出る理由は、次のように考えています。

座位や立位などの抗重力姿勢下では、脊柱起立筋が働きます。

しかし、不良姿勢でいると、全体的に脊柱屈曲位になるので、筋や筋膜は引き延ばされ、引っ張られます。

この、「筋が収縮しながら、かつ、引っ張られる」のは、筋や筋膜からの痛みが一番出やすい状態ですので、上記のような痛みにつながります。

ちなみに、難しいことを言いますが、「筋」やら、「筋膜」やらは、組織障害に伴う侵害受容器である「自由神経終末」が分布しているので、痛みの発生源であると同時に、痛みを感じやすいのです。

例えて言うと、次のようなことです。

写真のように、指をグッと反らしてみましょう。その状態を一定時間、保持します。

実際やってみました。1分くらいは、たいしたことないです。

もうちょっとやると、指に力が入ってきました。

指の色は、まずは赤くなり、続いて白くなってきて、指の腹側が地味に痛いんですよね、5分くらいで怖くなって止めました。

では、なぜ、痛いのにヒトは円背姿勢をとるのでしょうか。解剖学的に考えると、理由は次のようです。

それは、「脊柱を守るのに都合がいいから」と、わたしは考えています。

ヒトにとってみると、円背姿勢は、「後縦靭帯」「黄色靭帯」「棘上靭帯」「棘間靭帯」などの脊柱の後方にある靭帯を支持組織として、エネルギーを使わずに脊柱の安定性を高めることができるからです。

しかしながら、それでも抗重力姿勢では脊柱起立筋の筋収縮は行われますので、前述したような、「筋が収縮しながら、かつ、引っ張られる」メカニカルストレスの状況が起こります。

その結果、筋や筋膜からの「鈍い」痛みが出てくるのです。

そういう人の脊柱起立筋を触診してみると、「カチカチ」です。

【2-3.脊柱周囲の軟部組織から生じる痛み】

同じような理由ですが、脊柱周囲に沿って鈍痛を訴える人も多いです。

脊柱に関しては、先ほど挙げました脊柱周囲の靭帯系 (支持靭帯ともいいますが)「後縦靭帯」「黄色靭帯」「棘上靭帯」「棘間靭帯」など、他には、関節包、椎間板、なども痛みを感じる「自由神経終末」が分布している組織です。

これらの組織も、姿勢が悪くメカニカルストレスがかかり続けることで、痛みを出しやすいのです。

【2-4.不良姿勢による痛みは、常に間欠的】

ところで、今まで述べたような不良姿勢による痛みは、「常に間欠的」です。

この言葉は難しいですね、要するに、「痛くない時」があるのです。

まだ分かりにくいですね、図にしますと次のようになります。

図のように、常に痛みを起こしているわけではなく、活動している時や、座位を取っているときなど、「持続的な姿勢保持」が起こることで、痛みが生じます。

これは、目の前で起こっている腰痛が、姿勢によるものか、その他のものか、見分けるのに重要な情報ですので、ぜひ、覚えておいて欲しいです。

姿勢による腰痛は、「痛くない時」があるのです。また、もう一つ付け加えると、「動作によって増強しない」のです。

試みに姿勢性の痛みを起こす人を、ベッドに寝かせたり、また、背もたれのある椅子に寄り掛からせると、「痛くない」と言う人がいることに気が付くことがあるでしょう。

ところで、次のようなことをやってみましょう。

腰かけ座位で、少し前傾位を取ります。そして、自分の背部の筋に手を当ててください。そこから、徐々に体幹を後ろへ傾けていきます。すると、背部の筋の緊張が、すうっ、と抜けていくことが感じられるでしょう。

この現象は、股関節軸よりも体幹が後方にあることで、メカニカルストレスを起こすような筋の収縮が生じなくなるからです。これは運動学です。

【2-5.股関節と不良姿勢】

Chpt.1で述べた「股関節を柔らかくする」ということも、姿勢に関係してきます。

例えば、ハムストリングスが短縮していれば、骨盤が後傾し、加えて膝が曲がった立位姿勢となり、必然的に腰は曲がってきます。

逆に、大腰筋が短縮していれば、骨盤の前傾から「反り腰」になりやすくなります。「反り腰」姿勢は、椎間関節に余計なメカニカルストレスをかけ、痛みが出やすくなります。

つまり、「股関節の硬さは姿勢に影響して来る」わけですから、まずは、股関節周囲の筋の短縮を改善したり、筋力を増強したり、または、関節周囲の軟部組織を柔らかくするようなストレッチを指導したりする必要があります。

【2-6.postual syndrome について】

腰痛の運動療法で有名なマッケンジー法では、姿勢に関わる腰痛を” postual syndrome”としてとらえ、姿勢を変える、姿勢を工夫することで腰痛や下肢の神経症状を改善させるような方法があります。

これには患者さんご自身が、ご自分の姿勢と疼痛の関係について、深い内省をもって自分で対処する必要があります。

しかしながら、マッケンジー法のような腰痛治療の展開は、とても専門的な知識が必要で、コースを受講しないと、なかなかできません。

まだ、運動療法までたどり着いていませんね、運動療法にたどり着くまでにはもう少し腰痛について、痛みについて知ってもらう必要があるので長くなっています。すいませんねえ!

さて、次回までのクイズ!!!

「良い姿勢を保つ、脊柱を伸展させる」筋は、ナニ筋だと思いますか?

<ハラプリのたわごとは、次号につづく!!>

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