PTブログ:ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑩
膝に屈曲拘縮があり、関節可動域訓練や筋トレを行っても、なかなか改善しない。
・・・・そんな経験はありませんか?
なぜハムストのストレッチでは改善しないか?
なぜ膝の筋トレでは改善しないか?
今回は、その理由と解決策の一例をご紹介したいと思います。^^
PTハラプリです。
リハビリでは、運動学や解剖学をもとに患者を診る、そこから逸脱しないことが大切と考えています。
現象を客観的に、素直にとらえることが大事です。
患者さんの抱えている問題点は、実は、多くはありません。
(症例検討は、臨床でよくみられる症例をデフォルメしながら書いてます。)
【症例】
老健入所中の80歳女性。
ADLはほとんど車いすだが、軽介助での杖歩行は可能である。
3年前、左大腿骨頸部骨折で人工骨頭置換術を(後方侵入)施行した。
最近、左だけハムストリングスの緊張が亢進し、膝に屈曲拘縮ができてしまった。
ハラプリさん~
僕の患者さん、膝の拘縮が進んできちゃって。
ハムのストレッチをするとそれなりに伸びるけど、次の日にはもとに戻っちゃうんですよ。
放っておけば拘縮が進みそうで心配なんすよ!!
膝のROM練習や筋力増強訓練もしてるんですけど、改善しないっす。
今日はデートなんで、5分で評価して臨床推論を立てて、定時で帰らなきゃなきゃならないんですよ!!
ねえねえ、なんとかなんない??ねえ!
・・・・タメグチか~い。
そして、丸投げか~い。(怒)
最近、職場で雑に扱われている気がするが、気のせいかな。
私くらいの優秀なPTになると、その心は海のように広いのである。
後輩PT君の話によると、症例は膝伸展-5/-20。膝の痛みはなく、診断名の付くような膝疾患もない。
触診や被動抵抗では、左のハムストリングス、加えて、左の恥骨筋に筋緊張亢進と短縮が見られる。
また、触診では大腿外側が張っている。
ちみの臨床推論を聴こうではないか。
簡潔に述べたまへ。
膝の訓練では改善しなかったので、臨床推論をリセットしました。注目したのは、仙腸関節です。
仙腸関節に問題があると、仙腸関節の安定性を高めるために、ハムが緊張するでしょ?
それが継続すると、ハムストが短縮するでしょ??
案の定、仙腸関節は左が緩かったんです。(僕の推論通りです。えへん)
で、仙腸関節の安定性を高めるようなトレーニングもしてみました。でも、これも効果なしです。
PTポイント
仙腸関節は、仙結節靭帯を介して、ハムストと機能的につながっています。
仙腸関節が不安定だと、ハムストが緊張します。
いちいち癇に障ることを言うが・・・・・。まあ、推論はまともである。
これは、先輩の私が優秀であるからだな。うん。
・・・・・・しかし、なにかがおかしい!!
さて。
・・・・・私は憂国のPT戦士である。
日本の少子化問題解決のためにも、何としても後輩君をデートに行かせねばならぬのだ!
死ぬ気で、五分で臨床仮説をたて評価し、どんな自主トレーニング指導が望ましいか、後輩に指導してください!!
頑張れ、俺!
【臨床推論】
①症例は股関節を手術しているので、股関節不安定性の可能性から話を進めてみようと思う。
②膝の可動域制限の原因となっているハムストリングスは、膝関節の安定化、股関節の安定化、仙腸関節の安定化などに関わる筋肉である。
後輩の評価では左仙腸関節にゆるみがあったので、それを固定させるための筋トレを行ったが、効果が得られなかったという。
③ハムストの他には、恥骨筋の緊張も高かった。
恥骨筋は大腿骨頭を安定化させるのに有用な筋であると言われている。
なぜ、大腿骨頭を安定化させるのか??
それは、恥骨筋の走行が大腿骨の頚体角に類似しているからである。

④つまり、症例の左ハムストや恥骨筋がともに緊張しているのは、股関節が不安定であるからだと考えられないだろうか。
筋緊張が股関節の安定化のための代償であるとすると、筋力低下を起こしている原因筋はどこかを探る必要がある。
⑤骨頭を安定させる筋には、次の3つがある。
a.股関節の外旋6筋
b.股関節外転筋と内転筋の合力
c.関節包付着筋(前面➡大腿直筋や腸腰筋。外側面➡小殿筋)による疑似臼蓋作用


⑥大腿骨頭置換術は後方侵入であったということより、外旋6筋は切除されたと考える。そのため、外旋筋によるものは除外する。残るはbとcだが・・・・・。
さて、では次に評価をしてみよう!!
<次回に続きます>
ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑩<終わり>