5分で臨床推論

第10回② リハビリでハムのストレッチをするとそれなりにのびるが、翌日には元に戻るので困る②

<前回のあらすじ。>

3年前に、左大腿骨頸部骨折で人工骨頭置換術を施行した80歳女性。

ADLはほとんど車いすだが、軽介助での杖歩行は可能である。

膝に屈曲拘縮があり、関節可動域訓練や筋トレ、仙腸関節の安定性を高めるようなトレーニングを行ったが、改善しなかった。

左側ハムストリングスと恥骨筋に、緊張と短縮がみられ、触診では大腿外側が張っている。

左仙腸関節にゆるみに対し、それを固定させるための筋トレを行ったが、効果が得られなかったという。

症例の左ハムストや恥骨筋がともに緊張しているのは、股関節が不安定であるからだと考えられる。

筋緊張が股関節の安定化のための代償であるとすると、筋力低下を起こしている原因筋はどこかを探る必要がある。

骨頭を安定させる筋には、次の3つがある。

a.股関節の外旋6筋

b.股関節外転筋と内転筋の合力

c.関節包付着筋(前面➡大腿直筋や腸腰筋。外側面➡小殿筋)による疑似臼蓋作用

大腿骨頭置換術は後方侵入であったということより、外旋6筋は切除されたと考える。そのため、外旋筋によるものは除外する。残るはbとcだが・・・・・。

ogawaポイント

手術の際、外旋筋を温存するかしないかは、整形外科医の考え方によるようです。

高齢で活動量が低い場合には、外旋筋が切除されることが多いようです。

なぜなら、切除した方が手術時間が短時間で済み、結果として患者の身体への負担が減るから、ということです。

切った筋は、その後吸収されて無くなってしまいます。(大腿方形筋の一部は残ります)

手術後数年して、老健で出会った患者さんに、股関節外旋筋が残存しているかいないかを確かめることは、難しいことです。

申し送りで情報がない場合、外旋筋は「ない」ものとして考えた方が安全かもしれません。

【評価】

①被動抵抗では前述のとおり、左のハムストリングスと恥骨筋の緊張亢進がみられた。また、触診では左腸脛靭帯が著明に張っていた。

後輩君の評価に間違いはないようだ。筋力はどうか?

②股屈曲は筋力4/4 。外転筋力も著明な低下はなかった。

股関節外転筋や腸腰筋は維持されているようだ。

残るは・・・・・。

③試みに、小殿筋の運動方向である「股関節 外転、内旋」で保持を、側臥位で行わせたところ、左では可動域全体はあがったものの、すぐに落下してしまった。右はそうではなかった。

ハラプリ
ハラプリ
こ、これは・・・・・!
ハラプリ
ハラプリ

なぞは、すべて解けた~!!ような気がする~。

後輩君、聞いているのかね?

帰る支度してない?もしもし?話聞いてくれる?

【臨床推論リセット】

①MMT測定の結果、左小殿筋に筋力の低下があった。
このことより、症例の股関節の不安定性は、外旋6筋の機能不全および小殿筋の筋力低下が原因であると考える。

②では、外旋筋と小殿筋ににアプローチすべきか?

③外旋筋は切除されてるので、筋力増強は期待はできない。

④であれば、小殿筋の筋力強化を行うことを考える。

⑤小殿筋のトレーニングで股関節の安定性が増し、上記の筋の緊張が低下すれば、膝の伸展可動域制限の悪化を防止し、拡大が期待できるかもしれない。

⑥論理的には間違えはなく、すっきりしている。

ハラプリ
ハラプリ

<ハラプリのハラプリポイント>

小殿筋は解剖学上、付着が「大転子の前面」とある。
確かにそうなのであるが、小殿筋は股関節関節包の外側面にも付着する「関節包付着筋」でもある。関節包に付着しているものは、他にも、大腿直筋、腸腰筋などがある。
この関節包付着筋をトレーニングすることで、関節の安定を図りたいと思う。

しかし、関節包付着筋の中でも、大腿直筋はあまりトレーニングを行いたくないな、と考えている。
なぜなら、2関節筋だからである。2つの関節をまたぐため、この場合、骨頭の変位を起こしやすいためだ。

事実、腰や股関節の手術後などは大腿直筋の走行に沿って「張りを伴う痛み」がとても多いのを、ハラプリは経験している。

【トレーニング】

方針➡小殿筋を鍛えて股関節の安定性を高めることで、ハムストリングスの緊張を改善する。

・側臥位で、股関節をわずかに内旋させながら、外転

・30回くらい×2セット/1日

側臥位での股関節外転の自主トレイラスト側臥位での股関節外転

 

ハラプリ
ハラプリ

もちろん、これが必ずしも正解とは限らない。
トレーニングの結果は、必ず再評価してもらいたい。
また、私の有能さを示してしまったな・・・・・・あれ?

(いない・・・・・・)

え?後輩君なら、とっくに帰りましたよ。
利用者さんも部屋に帰りましたよ。
一人で、何をしゃべってたんですか?

*(「ハラプリの5分で臨床推論を立てよ」では、臨床でよくみられる症例をデフォルメしながら書いてます。)

*(当サイトのイラストは、理学療法士・作業療法士・スポーツトレーナー等の専門職が、自主トレーニング指導のために利用することを目的としています。
正しい利用がされない場合に生じたトラブルに関しては、一切責任を負いかねます。)

ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑩<終わり>

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