5分で臨床推論

第17回:左片麻痺。立脚で体幹前傾し、振り出し時には引っ掛かる。

PTブログ:ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑰

今回は、臨床でよくみられるケースについてご紹介したいと思います。

ハラプリ
ハラプリ
こんにちは。PTハラプリです。

運動学や解剖学をもとに患者を診ることを大事にしています。
運動学・解剖学を離れてしまっては「もやっと」してしまうのです。

運動学・解剖学は「1+1=2」の世界です。自分にとっては「すっきり」するんです。

症例が体現する現象を、とことん考えると、「これ以外には、ない。ああ、すっきりした」ところまでたどり着くことがあります。

さて、今回の症例は・・・・・。

【症例】

60歳代、軽度の左片麻痺の症例である。
発症から数年たっている。

ヘビトカゲ
ヘビトカゲ
「○○さあん、もっと姿勢を良くして、背筋をつねに伸ばして歩かんといかんとですたーい!!
ほら、背筋を伸ばしながらあ、
足首反りながらあ、
お尻の力入れながらあ、
それで歩きながらあ、
ほら、からだを前に傾けないでえ、
ほら、床にお金は落ちてないから正面見てえ、
ほら、おいどんの顔はちらちら見なくていいからあ、
からだに集中してえ、
はい、背筋伸ばしすぎい!
はい、肩に力入りすぎい!!
はい、すたすた歩くでありんすですたーい!!」
ハラプリ
ハラプリ
ちょっとー、ヘビトカゲ君!!
こっち来てえ!!

(~間~)

ハラプリ
ハラプリ
よくデュアルタスク、っていうけど、これ何通りのタスクよ・・・・?
患者さんが困惑してるでしょ~!!
ダメでしょ~・・・・。
ヘビトカゲ
ヘビトカゲ
ごめんなさいですたい!

ちょっと困ってたんですたい!!
ハラプリ先輩、助けてですたい!!!!!

ハラプリ
ハラプリ
(声がでか・・・・)
わ、分かった、私の繊細な耳が破壊されるから、はやく要件を言ってくれたまへ・・・・・。
ヘビトカゲ
ヘビトカゲ
「○○さん、麻痺側立脚で体が前に傾くでしょ?
前につんのめりそうになってるし、遊脚でもクリアランスが悪くて転びそうですたーい」

ヘビトカゲ君の、超マルチタスク訓練から、利用者さんを守るために、
さっそく、観察による歩容の特徴を、簡単に説明することにしよう!!

歩容

<矢状面>
体幹
麻痺側立脚期のLRですでに体幹前傾が出現し、そこからMstからTstまでにかけて体幹の前傾角度が強くなる。
遊脚では体幹は起き上がるが、重心は常に前方である。
下肢
MstからTstにかけて、麻痺側下腿の前傾が右に比べ少ない。
遊脚期では麻痺側膝関節の屈曲角度が右に比べ少ない。

足関節背屈角度に左右差はない。

LR=loading response(荷重応答期) 初期接地期~反対側の下肢が離地するまでの間
Mst=mid stance(立脚中期) 反対側の離地から始まる、単脚立脚期の前半部分
Tst=terminal stance(立脚後期) 単脚立脚期の後半

<前額面>
体幹
両肩の高さはほぼ同じ。
しかし、左右遊脚期のISwでは、麻痺側遊脚が非麻痺側遊脚期に比べて、遊脚側骨盤の下制がある。
また、麻痺側上肢は歩行周期全般を通して、緊張が高い。

ISw=initial swing(遊脚初期)

ハラプリ
ハラプリ
でも○○さん、Br.stageⅤ-Ⅴ-Ⅴだよね?
感覚も悪くないし、認知の問題もないのに、変だな?
なんであんなに「前につんのめりそう」なんだろう?
ヘビトカゲ
ヘビトカゲ
「これはたぶん、&%$#“◇△・・、ですたーい💦」
ハラプリ
ハラプリ
ヘビトカゲ
ヘビトカゲ
「?&%?$#“◇?△??・・?・・??・???💦💦」
ハラプリ
ハラプリ
(へびとかげくん、混乱しているね。
臨床仮説を立てる前にフリーズしてしまっている・・・・・・・。)

さあ、ヘビトカゲ君がフリーズして黙っている隙に、
5分で臨床仮説をたて、評価し、トレーニングを立案するですた~い!!!!!

【臨床推論】

麻痺側LRでの体幹前傾は、大殿筋の筋力低下(もしくは筋緊張低下)が考えられるが、ここでは麻痺側Mst~Tstにかけて前傾が強くなっている。
ということは、主たる問題が麻痺側大殿筋にあるとは考えにくい。

(大殿筋は立脚初期の体幹前傾を抑えるための活動が最も大きい)

②仮説として、重心の前方移動のために体幹を前傾させているのではないだろうか。
すなわち、通常はMst~Tstにかけて下腿が前傾するが、症例はそれが少ない。ということはこの仮説も十分成り立つ

③なぜそうなるのか?
それは麻痺側下腿三頭筋の筋緊張が亢進し、アンクルロッカー機能の機能不全からの代償動作と考えられる。
筋緊張が亢進しているのであれば、遊脚期でのクリアランスの低下とも結びつく。麻痺側立脚期の問題は、これで概ね片付く。

ハラプリ
ハラプリ
<PTハラプリのハラプリポイント>
この症例は、立脚の初期から体幹の前傾が起こっています。
立脚初期に体幹を直立に保つためには、大殿筋の機能が必要です。
だから、この時点では大殿筋の機能不全がもっとも疑われます。
しかし、症例は、そのあとに体幹前傾が強まってきます。
つまり、大殿筋の機能不全だけでは説明がつかなくなります。
結局、「症例は下腿三頭筋の緊張亢進があり、アンクルロッカーが働きにくく、歩行では重心の前方移動が求められることから、体幹を前傾させた」という理由の方が、より現象を説明できるようです。
現象をとらえ、運動学、解剖学をもとに患者をみることが大事です。

④麻痺側遊脚期の問題。
遊脚での足背屈の角度に左右差は見られなかった。
しかし、膝関節の屈曲角度の方に左右差があった。
そのため、麻痺側遊脚では膝屈曲角度の低下が問題であると考える。

<続く!!>

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