(*このブログでのお話は、臨床でよくみられる症例をデフォルメしながら書いてます。)
*PTブログ「ハラプリの5分で臨床推論を立てよ」では、理学療法士のお仕事を、ストーリー仕立てで楽しく紹介します。
臨床推論を立て、評価し、訓練メニューを作成するまでの流れと、使用する自主トレーニングのイラスト例を、ご覧ください!
いつものワンパターン、PTハラプリです。
日々、「運動学」と「解剖学」をもとに(あたりまえのことですが)、患者さんの症状を突き詰めて考えることを心がけています。
患者さんを目の前にして、私が一番信頼している教科書は「現象」です。
現象は嘘をつきません。
現象を客観的に、素直にとらえることが大事です。
⑤では、膝関節屈曲角度低下の原因は?
それについては、
(A)ハムストリングスの収縮機能不全、
(B)大腿直筋の緊張亢進が考えられる。
⑥(A)(B)のどちらか。
症例は、歩行周期全般を通して、麻痺側上肢の緊張が高い。その上肢の肢位から、麻痺側では大胸筋の緊張が高いことが伺える。
これは腹直筋から大腿直筋への筋連結へと結びつく。
だから(B)かもしれないが、しかしすっきりしない・・・・。
〇アナトミートレイン 大胸筋、腹直筋と大腿直筋は筋膜でつながっている。
⑦キーワードは筋緊張のようだ。
では、筋緊張を評価してみよう。
【評価】
・左下腿三頭筋はMAS(Modified Ashworth Scale)1+だった。
・体幹の筋緊張は、起き上がり動作の行い方でみた。
起き上がりの動作観察では、体幹の回旋を伴わず、真っ直ぐ起き上がるような動きがみられ、腹直筋の優位性が認められた。
また、同動作で、麻痺側下肢が伸展、内旋する「伸展痙性」がみられた。
・腹部の触診では、麻痺側の腹側部が柔らかく委縮しており、腹直筋部は硬かった。
MAS(Modified Ashworth Scale)
0 筋緊張の変化なし
1 動作時に引っ掛かるような感じの後にその感じが消失。または、最終伸展域でわずかな抵抗感
1+ 筋緊張は軽度亢進
可動域の1/2以下の範囲で引っ掛かる感じの後にわずかな抵抗感
2 可動域全体で筋緊張は亢進。他動運動は容易
3 筋緊張はさらに亢進。他動運動は困難
4 四肢は硬く他動運動は不可能
【臨床推論リセット】
①腹直筋と大腿直筋の緊張を押さえるにはどうしたらいいのか?
②体幹の状態を見てみよう。
前額面で両肩の高さはほぼ同じ。
しかしISwでは麻痺側遊脚における遊脚側骨盤の下制が見られる。
これは、麻痺側体幹の側屈筋が低下しているために生じる。
③すると、遊脚の際に「見かけ上の脚長差」が生まれる。
その分、麻痺側下肢を振り出すのに努力が必要となった。
そのための股関節屈曲作用に、大腿直筋が使われた。大腿直筋は膝関節伸展作用もあるため、膝関節屈曲を阻害した。(この時点で、(A)ハムストリングスの収縮機能不全の可能性は消した)
④まとめると、振り出し時の麻痺側膝関節屈曲の減少は、(麻痺側下肢の支持性向上のための大腿直筋緊張による影響というよりも)遊脚期の麻痺側体幹の収縮による、骨盤の引き上げの減少が原因のようだ。
⑤矢状面で、立脚期の膝関節と体幹の肢位の位置関係から、(体幹が前傾なので膝関節には伸展モーメントが働いてしまうため)四頭筋作用はそれほど必要としていないと考えられる。
⑥あやふやなところはなく、すっきりしている。
よって、下部体幹の側屈筋(麻痺側腰方形筋)の収縮を促通するためのトレーニングを提示する。
【トレーニング】
基本方針➡
1.下部体幹の側屈筋(腰方形筋)を鍛える
2.下腿三頭筋のストレッチを行う
1.サイドブリッジ(できれば。できないかも)


出来なければ、座位で非麻痺側への重心移動+麻痺側の骨盤挙上
2.下腿三頭筋ストレッチ
・上記のトレーニングを2週間ほど行っていただき、歩容の変化を見てみる。
・振り出しについて考えると、当然のことながら「大腰筋」の機能不全も考えてもよかった。
大腰筋は下部腰椎に起始し、振り出しの際には腰椎を前方に引っ張る。
したがって大腰筋が正常に機能するためには、腹斜筋や多裂筋、その他の「脊椎を安定化させる筋」が働かなくてはならない。
これらが協調して働かないと、脊椎が変位してしまうからでる。
・症例は腹側部が委縮していたことから、下部腹筋群の働きが低下していた可能性もある。
その場合は、上記の運動で変化が起こらないとおもうので、注意して観察したいところだ。
ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑰<終わり>