5分で臨床推論

第22回:寝たきりの症例。両膝が伸びず移乗が大変

PTブログ:ハラプリの5分で臨床推論を立てよ㉒

運動学や解剖学をもとに患者を診る、そこから逸脱しないことが大切と考えます。
臨床でよく見かける典型的な症例であっても、アプローチの方法がよく分からないことが良くあります。

高齢社会となり、たとえ診断名があったとしても、疾患以外の様々な要因が絡みついていて、どこから手をつけたものかわからなくなるのです。

そんなときも、解剖学や運動学をもとに考えると解決方法の一端が見えることがあります。

ハラプリ
ハラプリ

みなさん、こんにちは。

PTハラプリです。

私は元気です。みなさんはいかがですか?

今回の症例は、「介助での移乗が大変な症例」です。

以前も同じような症例を挙げたことがあるのですが、ちょっと他の考え方とアプローチを書きました。

【症例】

介護施設入所中の90歳女性。

高齢で認知機能が低下しており、ADLはベッド上か車いす上で全介助である。いわゆる「寝たきり」に近い。

移乗の際に、両膝関節が屈曲してしまい、足が車いすのフットレストに引っ掛かってしまう。

そのため、現在移乗は2人介助でおこなっている。

さて、いつものことながら、介護福祉士のフジ山ミネ子さんがくねくねと登場する。

フジ山ミネ子
フジ山ミネ子
ハラプリせんせー♥、○○さんですけどお、いま、二人でトランスう、してるんですけどお♥」

「今日は他に、だあれもいないし、手伝ってくれませんかあ♥」

ハラプリは仕方なく・・・・じゃない。

仕事があることに喜びの涙を流しながらベッドサイドに訪れると、○○さんがベッドに寝ている。

ハラプリ
ハラプリ
「・・・・・これは・・・・。」

 

フジ山ミネ子
フジ山ミネ子
「見て下さい、○○さん、円背でしょ?

ベッドで寝てるときに、すごいんですよ、頭が枕につかないの」

・・・・・なるほど。

○○さんの臥位姿勢の特徴は、

・両下肢が屈曲位である
・視診では、背臥位で骨盤後傾、脊柱屈曲肢位が強く、頭が枕につかない。
・触診では、腹直筋の緊張亢進あり。加えて、ハムストリングスの筋緊張が亢進。
・ROMは膝伸展-30/-30。足背屈10/10。

そして、座位や移乗時に膝関節が過度に屈曲してしまうので、下肢での体重の支持が困難となっている。

動作指示への理解が困難なので、神経学的な麻痺の程度は分からないが、おそらく両側片麻痺があると思われる。

ハラプリ
ハラプリ
「・・・・ミネ子さん・・・・.

ところで、私を置いてどこかに行こうとしてます??」

ハラプリ
ハラプリ
「え?・・・今日は昼休みは、ヘビトカゲ君やマヤオ君と一緒にケーキバイキング?

だから、あとは任せた?移乗も僕一人でやってくれって?」

・・・・あれ?気が付いたら風と共に去りぬ??

まいったなあ・・・。

僕ももう50過ぎてるから、力もないし一人じゃ無理だ。どうにかならないか?

さあ、5分で臨床推論を立て、評価し、トレーニングを提示してください!!

【臨床推論】

①一人介助で移乗をするためには、膝の屈曲を抑え、下肢荷重が少しでも行えるようにする必要がある。

②寝たきりで身体が丸まるのは、大脳皮質が委縮するからだと言われているが、それでは明確なアプローチが見つからなくなってしまう。ここでは明確なアプローチが提示しやすい筋骨格系のとらえ方をしたほうが良いと考えた。

③臥位姿勢をみると、屈曲位で頭が枕から浮いてしまっている。腹直筋の筋緊張を高めている様子が伺われるが、これはなぜか。

④症例にとって、その方が「都合がいい」ためである。

⑤何に都合がいいのか。「脊柱の安定化」である。具体的には、脊柱後縦靭帯群を伸長させれば、脊柱を安定させるのに都合がいい。

⑥ここで、足関節は過度に底屈していない。これに対して膝関節が屈曲するのは、ハムストリングスの緊張増加によるものである。ハムストリングスは仙結節靭帯を介して脊柱起立筋群と筋連結がある。
つまり、ハムストリングスの緊張は脊柱起立筋群の緊張増加を助け、加えて腹直筋の緊張との合力から脊柱を固定させているのである。

ハラプリ
ハラプリ
<PTハラプリのハラプリポイント>
脊柱安定化に関して思うこと
ヒトを始め、私たちは「脊椎動物」と呼ばれています。
臨床をしていてよく思うのは「人間は脊柱を守る働きが強いなあ」ということです。
ちなみに、魚はほとんど体全体が「体幹」であり「脊柱」です。素早く動いて獲物を捕まえたり、敵から身を隠したりするためには「脊柱の安定」がとても大事だったと考えられます。
人間も、進化の過程でその記憶を残しているのではないでしょうか。

魚類の骨格

4足歩行動物の骨格

ハラプリ
ハラプリ
今回の症例は、全体的な屈曲肢位をとっています。これを、私は「体幹を屈曲し脊椎後靭帯群が伸張されることで脊椎を安定化させている」と考えました。
高齢者の「寝たきり」の屈曲肢位は、「四足歩行動物の屈曲位」に似ていますね。

⑦ということは、脊柱起立筋群や腹直筋などの筋の活動をなるべく抑え、他の脊柱安定化筋(腹部では腹斜筋群、背部では多裂筋か)の活性を高めるようなアプローチが良いのではないだろうか。

【トレーニング】

基本方針➡動作指示が入りにくいので、抗重力肢位で姿勢反射を利用し筋の活動を高める

図のような座位をとり、左右方向に揺らす。他動運動。5分程度
(足底は接地でも離地でもよい)

上記のトレーニングを施行後、膝の曲がりが少なくなり、少しではあるが下肢で支えてくれるようになった。
結果的に、一人介助で可能になった。
加えて、臥位で、腹直筋の緊張が低下し、枕に頭が接するようになった。

ハラプリ
ハラプリ
「・・・・・良かった。これから臥位姿勢も良くなってくるといいなあ・・・・。」

ハラプリのお腹がぐうとなった。

フジ山ミネ子
フジ山ミネ子
ハラプリせんせー♥、ありがとうございました~♥
お土産のケーキですう!!」

「でも、これだけじゃ足りないと思うから、仕事終わったら今度はフレンチバイキングに行きましょ~!!」

ハラプリ
ハラプリ
「ミネ子さん・・・・ダイエットは・・・・。」
フジ山ミネ子
フジ山ミネ子
「は?」

ハラプリ
ハラプリ
「な、何でもないです・・・・。」

~おわり~

ハラプリの5分で臨床推論を立てよ㉒<終わり>

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