5分で臨床推論

第六回:右片麻痺、伸展パターンが強くて移乗が安定しない

PTブログ:ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑥
第六回:右片麻痺、伸展パターンが強くて移乗が安定しない

みなさんこんにちは。

はじめての人は、はじめまして!!

運動学や解剖学をもとに患者を診ることを大事にしています。

PTハラプリです。

患者さんの症状を、解剖学、運動学の視点から診て、考えていくと、「これ以外あり得ないな」というところまで行きつくことがあります。

そうして患者さんの症状が緩解すると、なかなか快感です。

(なお、このブログは事実をもとにしておりますが、フィクションとなっております。)

【症例】

85歳の女性。右片麻痺を数年前に発症した。

車いすベースとなっており、移乗で右下肢の緊張が強くなり介助を要するとのことである。

立ち上がりは左上下肢を主に使用し、手すりを引っ張るようにして行っている。

立位は、健側(左下肢)優位の支持である。

歩行時、右下肢の振り出しでは右下肢伸展パターンが出現し、股関節内転位となってしまい、支持が困難となる。

・・・・さて。

「ねえリハビリさあん、トイレの介助がすんごく大変なのよ、なんとかならない?困っちゃってさあ・・・。」

と、介護職のおばちゃんが、笑ったような、怒ったような・・・・いいや、明らかに怒ったように言ってくる。

よっぽど大変なのだろう。

それに、いまの介助量では在宅生活が大変だ。

利用者さんの精神状態は良好である。

右下肢の緊張を和らげ、右下肢支持を高めて移乗の安定化を図り、自立は無理かもしれないが、なんとか見守り程度で移乗できないだろうか・・・・。

もちろん、股関節内転筋のストレッチなんかをマメにやれば、その場ではよくなるかもしれないが、結局元に戻ってしまい、同じことになってしまうのではないか?

ここは、PTの腕の見せ所だ!!

5分で臨床仮設をたて、評価し、トレーニングを指導してください!!

【臨床仮説】

①まず、なぜ右振り出し時に股関節内転位になってしまうのか考えてみよう。

②下肢を前方に振り出すための股関節屈曲筋は、骨盤の前傾や腰椎の前弯を生じさせる。

③それを抑えるために腹部体幹筋を収縮させるが、その作用を腹直筋が行い、腹直筋と下肢の筋連結作用から、股内転筋を介して大腿直筋の緊張を高めてしまうと考えられる。

これにより股関節内転、下肢の伸展パターンが出現したと考えられる。

④もしくは、振り出しのための股関節屈曲のため、大腿直筋を用いるために、腹直筋を活性化し、その結果、股関節内転筋との筋連結で股関節が内転してしまうと考えられる。

⑤どちらもありそうであるが、いずれにせよ、キーポイントである腹直筋の活性を下げるようにすれば、内転筋の亢進が防げるのではないか・・・。

⑥床上動作で、腹直筋と下肢の伸展パターンとの筋連結が伺えれば、仮説が正しい可能性が高いと考えられる。

【評価】

・右下肢はstageⅢ程度。中等度以上の表在覚鈍麻があった。深部覚は評価していないが、ありそうである。

・寝返りでは、麻痺側への寝返りで著明に股関節が内転、内旋、膝伸展、足部内反がみられた。

・起き上がりでは、体幹の回旋が少なく、むしろ真っ直ぐ起き上がる。腹直筋の使用が伺われ、この際も、下肢の伸展痙性がみられた。

<PTハラプリのハラプリポイント>

麻痺側への寝返りでは、麻痺側内腹斜筋の回旋作用を用いるのであるが・・・・。

しかし、麻痺側の内腹斜筋は使えないために、非麻痺側下肢で床を蹴ろうとする。

が、これを行わせないと、症例は腹直筋を用いることで賄おうする。

当然、腹直筋では体幹回旋作用が少ないため、筋収縮を強める。

その結果、腹直筋~股内転筋、大腿直筋の筋連結から、下肢の伸展痙性を強めてしまうことがある。

(`フロントファンクショナル・ライン‘や‘スーパーフィッシャルフロントライン‘⇒「アナトミートレイン」参照してください。)

【トレーニング】
*下肢の伸展痙性と関わりの少ない筋で、骨盤前傾や腰椎の前弯を防ぐ筋を活性化したい。
内腹斜筋の活性化である。

①内腹斜筋のトレーニング
臥位での骨盤後傾 × 3~5分(休憩を入れながら)

骨盤後継の自主トレイラスト骨盤後継

*以上のようなトレーニングを行って、様子を見ることにする。

しかし、上手くいかないこともありうるな、、、とも考えている。

上記の運動が、結局、腹直筋を使ってしまうことがありうるからだ。

下肢の筋緊張と、腹直筋とは、強いつながりがあるからである。内腹斜筋の収縮を促すのは、難しい。

*だとしても、うまくいかなかったら、上記の臨床推論を捨て、新しい推論に切り替えるだけである。

<終わり>

 

 

*(「ハラプリの5分で臨床推論を立てよ」では、臨床でよくみられる症例をデフォルメしながら書いてます。)

*(当サイトのイラストは、理学療法士・作業療法士・スポーツトレーナー等の専門職が、自主トレーニング指導のために利用することを目的としています。
正しい利用がされない場合に生じたトラブルに関しては、一切責任を負いかねます。ご注意ください。)

ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑥<終わり>

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