5分で臨床推論

第20回:介助で移乗のとき、膝が屈曲してフットレストに足が絡む

PTブログ:ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑳

患者さんの病態は、一人として同じものはありません。

全て、ケイスバイケースです。

どんなに経験を積んでも、それは変わりません。

ハラプリ
ハラプリ
呼ばれれば現れる。

呼ばれてなくても出現する。

それがPTハラプリです。

皆さま、お元気でしょうか。

解剖学と運動学から患者を診る、そこから逸脱しない、ということを心掛けています。

症例はおおむね自分が経験したものや、勉強会などで出た症例をデフォルメして書いています。

そんなわけで、これはフィクションです・・・。

さて、今日の症例は・・・・・?

【症例】

施設入所中の高齢の女性。車いすベースでADL介助である。認知機能は低下しており、動作指示が入りずらい。

両側片麻痺がある。
指示が入りずらいので詳しくは分からないが、上下肢とも連合反応レベル(Br.stageⅡの要素が強い)と思われる。

座位での下肢は、左の方が右よりも膝関節屈曲位である。
膝関節はハムストリングスの短縮に加え、関節自体の拘縮もあり膝伸展㊨-15/㊧-30である。

足関節には著明な拘縮はない。

上肢の肢位は、両側とも肩関節が内転、内旋。肘が屈曲、回内である。
手指は屈曲位で、筋緊張が亢進していることがわかる。

痛みはなさそうだ。

症例の体重が軽いので、車いすからベッドへの移乗は、前方からの一人介助で十分だが、離殿の際に、

①左膝関節の屈曲
②足関節の底屈・内反

が、強まる。

結果的に、左足が車いすのフットレストに引っ掛かってしまう。

先日、これが原因で足をすりむいてしまったという・・・・・。

介護福祉士のフジ山ミネ子が、ハラプリに向かって、くねくねしながら歩いてきた。

おお、ダイエットは成功して・・・・・いないな。

ミネ子さんについては過去の投稿に詳しいので、どうぞよしなに・・・・。

第13回:痛くてもう私、走れない♥
第16回「移乗の時、右手で手摺りを把持することを嫌がる症例」を参照

フジ山ミネ子
フジ山ミネ子
「ハラプリせんせ、おかげさまで足の調子は良好ですう~♥、
ところで○○さんのことでっすけど、体重、軽いから全介助でトランスファできるんですけどお、フットレストに足が絡んで危なくて。
こないだも、足をすりむいちゃって、ご家族と施設長に怒られちゃったのよ。
ミネ子、困っちゃう♥」
ハラプリ
ハラプリ
(そんなこと言われても、ハラプリも困っちゃう・・・・・。)
フジ山ミネ子
フジ山ミネ子
「あのフットレスト、外れないのよ。
だいたい、フットレスト外せばいい問題じゃないような気がするのん・・・・♥」
ハラプリ
ハラプリ
(・・・・確かに、フットレスト外せばいい問題じゃないよなぁ。
でも、なんで膝が曲がってきちゃうんだろう?
・・・・あ、ひょっとして!!)

ちょっと考えてから、ハラプリは患者さんのところへ行き、ベッドに座らせ、5分程、前後に揺らすような練習を行った。

そのあと、介助で立たせてみると、膝は過度に屈曲してこない。

ハラプリは、満足そうに何度もうなずいたのであった・・・・。

・・・・・情報はこれだけにしておく。

ハラプリはなぜ、症例を前後にゆすったのか。

どうしたら、足が引っ掛からないで移乗ができるのか?謎はますます深まった!!

5分で臨床推論を立て、評価し、トレーニングを立案してみてください!!

【臨床推論】

左膝関節の屈強方向への動きは、ROM制限と、膝関節屈曲筋の筋緊張亢進が主な原因と考えられる。

②車いすユーザーであり、ご高齢であることから、膝関節のROMを改善させていくことは、いまさら難しいだろう。
では、筋緊張亢進を改善させたいが、筋緊張亢進の原因はなにか。

足関節の底屈、内反、膝関節屈曲という一連の現象を、筋連結からとらえてみる。
すると、腓腹筋、ハムストリングスは仙結節靭帯を介して脊柱起立筋とつながることが見えてくる。
(これは、「アナトミートレイン」の考え方である)

アナトミートレインとは?
アナトミートレインの考え方は、「筋肉はそれぞれ独立的に働いているのではなく、筋膜を介してつながっており、共同して働く」というものです。1990年台にトム・マイヤーズ(ボディワーカーと紹介)によって開発されました。

アナトミートレインは、「12種類の筋・筋膜経路」で身体の姿勢や動きに関する「機能的な連結」を説明しています。

脊柱起立筋はアウター筋としては強い働きがあり、脊椎の伸展とともに、「脊柱の安定」にも関与する。

 

④同様に、座位では上肢が肩関節内転・内旋、肘屈曲・回内、手指屈曲位である。これを筋連結から見てみると、腹直筋の緊張を高めているように見える。

⑤要するに、下肢の屈曲(ハムストリングスの緊張亢進➡脊柱起立筋の活性化)で脊柱の安定化を図り、それに拮抗するように、上肢の屈曲で腹部筋の活性化を図っているのではないだろうか、と考えた。

キーワードは「脊柱の安定化」である。ひとつ、評価してみよう!

次回、謎が解ける・・・・かな?

<続きます!!>

*(「ハラプリの5分で臨床推論を立てよ」では、臨床でよくみられる症例をデフォルメしながら書いてます。)

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