5分で臨床推論

第20回②:介助で移乗のとき、膝が屈曲してフットレストに足が絡む②

介助で移乗のとき、膝が屈曲してフットレストに足が絡む②

<前回のあらすじ>

施設入所中の高齢の女性。
車いすベースでADL介助である。
認知機能は低下しており、動作指示が入りずらい。
両側片麻痺があり、上下肢とも連合反応レベル(Br.stageⅡの要素が強い)と思われる。

座位での下肢は、左の方が右よりも膝関節屈曲位である。
ハムストリングスの短縮に加え、関節自体の拘縮もあり膝伸展㊨-15/㊧-30である。

足関節には著明な拘縮はない。

上肢の肢位は、両側とも肩関節が内転、内旋。肘が屈曲、回内である。
手指は屈曲位で、筋緊張が亢進していることがわかる。

症例の体重が軽いので、車いすからベッドへの移乗は、前方からの一人介助で十分だが、離殿の際に、

①左膝関節の屈曲
②足関節の底屈・内反

が、強まり、左足が車いすのフットレストに引っ掛かってしまう。

介護福祉士のフジ山ミネ子は、「フットレストを外せばいいような問題ではない」と看破し、ハラプリに解決策を迫る・・・。

ハラプリはこの患者さんをベッドに座らせ、5分程、前後に揺らすような練習を行った。

そのあと、介助で立たせてみると、膝は過度に屈曲してこなかった。

なぜだろうか??

キーワードは「脊柱の安定化」である。

(なお、このブログは事実をもとにしておりますが、フィクションです。)

ハラプリ
ハラプリ

<ハラプリのハラプリポイント>

*「アナトミートレイン」についてハラプリが考えること
アナトミートレインの考え方は、「筋肉はそれぞれ独立的に働いているのではなく、筋膜を介してつながっており、共同して働く」というものです。1990年台にトム・マイヤーズ(ボディワーカーと紹介)によって開発されました。

アナトミートレインは、「12種類の筋・筋膜経路」で身体の姿勢や動きに関する「機能的な連結」を説明しています。

例えば、今回の症例のように、ハムストリングスを「スーパーフィシャルバックライン(下図)」の一部として理解することは、これらの筋肉を単体として考慮することでは解決できなかった問題への新たな考え方を与えてくれています。

私はこの考え方を「問題解決のための解剖学のツール」として、有用だ、と考えています。
単独の筋肉の働きの分析では得ることのできない、解決方法を与えてくれることもあるからです。

【評価】

「脊柱の動きを強く出させるような動き」をさせた際に、下肢屈曲の動きがでるか、動作を評価してみた。
・すなわち、「座位から臥位にさせた時の、下肢の動き」をみた。
移乗よりも、この動きの方が脊柱に加わる力は大きいからである。
・すると、背中が丸まり、下肢の屈曲が強まった

【臨床推論リセット】

①移乗よりも、座位から臥位になるときの動きの方が脊柱を動かす強さは大きい。

この動きの際に、腹部筋が働き脊柱後湾が強まった、と同時に下肢が屈曲した。

「脊柱安定化」のためには、腹筋に抗して、背筋の緊張をさらに高める必要があったと思われる。

しかしながら「背筋だけでは賄いきれず」、下肢の屈曲(=ハムストリングスの緊張亢進)という筋連結の力を「借りて」抗したと思われる。

下肢屈曲の動きが、「脊柱の安定化」を図るための、「借り」とみてもよさそうである。

③問題は、背筋の力が弱いので、ハムストリングスの緊張を高めなければならないということと考える。

④すなわち、背筋そのものの力を強めることで、ハムストリングスがそれほど収縮しなくてもよいようにすればいいのである。

【トレーニング】

*背筋の筋力強化を行う。

症例は指示動作をおこなうことが難しいので、姿勢反射を利用して行うこととする。
具体的には、座位で体幹を前傾させると、背筋の収縮が生じることを利用する。

体幹前傾の自主トレ体幹前傾

座位で、他動的に前後へ揺らす。
休みを挟みながら、5分以上行う。

結果は、座位での膝屈曲角度が減少し、介助立位の際の左膝屈曲方向への動きがなくなった。移乗の際の「足のひっかかり」もなくなり、移乗の介助量が減った。

ハラプリ
ハラプリ
「ミネ子さん、見て下さい。足が引っ掛からなくなったでしょ?
・・・・ああ、また、私の素晴らしさを証明してしまった・・・・。」
フジ山ミネ子
フジ山ミネ子
「足がフットレストに引っ掛かる方、結構多いですからね、助かるワン。♥
つぎはハラプリさんが、ミネ子に引っ掛かって欲しいニャン♥
ハラプリ先生、また、餃子の食べ放題に行きましょうよ~♥」
ハラプリ
ハラプリ
「うええええ~、ミネ子さん1人で10人前は食べるからなぁ・・・・。
えっと。
あと一応指摘しておきますけど、ダイエットは・・・・?」
フジ山ミネ子
フジ山ミネ子
「?」

ハラプリ
ハラプリ
「な、何でもないです・・・・。」

*(「ハラプリの5分で臨床推論を立てよ」では、臨床でよくみられる症例をデフォルメしながら書いてます。)

*(当サイトのイラストは、理学療法士・作業療法士・スポーツトレーナー等の専門職が、自主トレーニング指導のために利用することを目的としています。
正しい利用がされない場合に生じたトラブルに関しては、一切責任を負いかねます。)

ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑳<終わり>

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