運動学や解剖学をもとに患者を診る、そこから逸脱しないことが大切と考えています!
こんにちは~。
毎度おなじみ、PTハラプリです。
臨床をしているといつも思うのですが、患者さんの訴えを聞いたときに、自分の頭の中の「引き出し」が多い方がいいなあ、アプローチの幅が広がるなあ、と思うのです。
私にとっての「引き出し」は、解剖学と、運動学と、それをもとにした「観察する目」、「考える力」です。
世の中には「○○法」とか、「△△メソッド」とか、いろいろありますが、それはそれでとても完成された方法論で、それを熱心に勉強されて臨床応用されている方も大勢いらっしゃるので、私は尊敬します。
しかしながら、最近、ちょっと考えてしまうことがありました。
私の知り合いの職場で、トップの方が「○○法」のセラピストであるということから、「職場全体で、○○法を使って診療する」という方針になったということです。
私の知り合いは「○○法」に疑問を感じているものですから、その方針に反対したそうですが、最近、「嫌味を言われるようになり、すみっこに追いやられた」とのことです。
へんな世の中にならないでもらいたいものです。
Contents
【症例】
なんかリハ室になぞの妖気が・・・・。」
「・・・・今度は首です。
最近、上を向いて右側に首をひねると痛いんです・・・・」
新人PTの北島マヤオが、やっぱりよろよろしながらやってきた。
演劇部に入っていたこともあり、大げさな男だ。
アニメと乃木坂46をこよなく愛するリハ室の異端児である。
(・・・・・ちなみにうちのリハ室には異端児しかいない。)
彼が痛みを感じる姿勢をとってもらい、どこが、どのように痛むかをいってもらうと次の通りだった。
・頸部を伸展、右側屈させる動きの時に、「詰まるような痛み」がある。
・痛みの場所は、T1/2高位、右側である。
私、必ず膝をついて、目線を合わせてですね、こうやって。
えらいでしょう?」
彼はそのようにやって見せる。
膝をついて利用者に面を向けると、なるほど、頸部は伸展位だ。
患者さんじゃなくて?
・・・彼にとってはリハ室は劇場だったのか。。。)
「・・・・ええと、喜多島くん、それの原因は何だと思う?」
きっと、あれですよ、
お金がなくて、首が回らなくなるやつ」
これは、新人さんが頸椎の勉強をするのにはいいかもしれないな、一丁、診てみましょうか。
みなさんは、喜多島くんが言っている「現象」から、どのような「引き出し」を頭の中に思い描くことができますか?
5分で臨床推論を立て、評価し、トレーニングを指導してください!!
【臨床推論】
①「詰まるような痛み」は、関節がズレたり、ぶつかったときに発する痛みである。
②このことと、痛みを出している部位から類推すると、(A)T1/2間の右椎間関節 (B)右肋椎関節の過度な動き が痛みを出している可能性がある。
③では、頸部を動かしたときのA、B、の動きを触診で評価すれば、①②について論証できるではないか?

【評価】
・頸部の伸展位から左右方向の側屈運動で、T1/2間の肋骨の動きや、椎体の動きを触診する。
・特に、動きに左右差がないか、の視点で触診する。
・右肋椎関節では、左側屈と比べて、右側屈の方が、肋骨が後方へ飛び出た。
・椎体は、左側屈と比べて、右側屈の方が、椎体が前方へ移動した。(特にT 1)
【臨床推論リセット】
・評価から確実に言えることは、頸部の伸展・右側屈(症例が疼痛を感じる肢位)では、T1が前方移動し、T1/2間の椎間関節の前方すべりが大きくなってしまうことがわかった。
・これが、「関節がズレてぶつかった状態」=「詰まるような痛み」を出したのではないだろうか。では、なぜこのような現象が起こっているのか?

・仮説として、頸椎の中~下位の可動性の低下による胸椎の代償作用が、胸椎の過可動性へとつながり、症状が出たのではないかと考えてみた。
・そこで、頸椎(特に中~下位)について、頸椎伸展・側屈時の可動性を調べてみた。
<PTハラプリのハラプリポイント>
頸椎可動性の触診による評価は、慣れないと難しいのですが、ちょっとしたコツがあります。
頸椎の後方からの評価は、筋肉量が多くて、棘突起くらいしか触れないのです。
棘突起も、C3,4,5あたりは他と比べて小さいので、頸椎の伸展により「隠れて」しまうので、ますます分かりにくくなります。

私は、頸椎(下位頸椎)の触診は、頸部前方から行います。
胸鎖乳突筋の外側周辺を、注意深く、やさしく触診すると「横突起」が触診できます。頸部の屈伸、回旋などの動きの時には横突起が動くのを感じることができます。
頸部前方はデリケートな場所ですので、まずは患者さんに声掛けして御了承を頂き、くれぐれも優しく行ってください。
・結果、頸椎伸展・右側屈では、(頸椎伸展・左側屈に比べて)横突起の前方移動は少なかった。
・以上をまとめる。
・頸椎伸展・右側屈の動きは、本来なら頸椎の中~下位での動きが主体である。
・しかし、頸椎の中~下位の可動性が低下しているため、胸椎の過可動で代償した。それがT1/2椎間関節の痛みにつながった。
・論点に曖昧なところはなく、すっきりしている。
【トレーニング】
基本方針 ➡ 中~下位頸椎の可動性を増加させる
頸部を伸展・右側屈させた肢位でタオルロールを頸部に挿入
5分 / 日

トレーニング後の変化(直後の変化)を確認すると、頸椎伸展・右側屈の動きでの痛みは消失し、加えて、頸部伸展の可動域が大きくなった。
ただし、頸部伸展の最終可動域では、症状が出現していた。
しかしながら、トレーニングで結果が出たことから、推論の有用性が証明されたので、まずは継続していただくこととした。
~おわり~
ハラプリの5分で臨床推論を立てよ㉓<終わり>