5分で臨床推論

第八回:「伸びあがり歩行」が恥ずかしい学生さん

PTブログ:ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑧

日々、「運動学」と「解剖学」をもとに(あたりまえのことですが)、患者さんの症状を突き詰めて考えることを心がけています。

患者さんを目の前にして、私が一番信頼している教科書は「現象」です。
現象は嘘をつきません。

現象を客観的に、素直にとらえることが大事です。
患者さんの抱えている問題点は、実は、多くはありません。

みなさん、お元気ですか?
いつもの、
PTハラプリです。

 いつものことですが、患者さんを診るときに、解剖学、運動学からアプローチする、そこから逸脱しないことが大切と考えます。
さてさて、今回の症例は・・・・・。

【症例】

20歳の学生。
PTを目指していて、臨床実習に来ている。
問題となるような既往はない。ケガもない。

わたしの悩みは「伸びあがり歩行」なんです・・・・・。

自分の歩き方について、特に意識したことはなく、今まで全く気が付かなかったのが、学校の運動学の講義で先生から、歩容の特徴を指摘されたらしい。

「伸びあがり歩行の典型例」だって言われて、みんなの前で歩かされたんです。
みんなは勉強になったってなぐさめてくれたんですが、私は、恥ずかしかったし、焦っちゃったんです。
だってPTなのに歩容が変なんて、患者さんに自分で治せないのか?って言われそうですよね!!」

と、ため息。

観察してみると、伸びあがりは、両側立脚後期、TOで早期に足関節を底屈させるような動きに顕著にみられる。

*TOとは?・・・・足指離地(toe off)

とくに右立脚後期に伸びあがりが強い。

ぴょっこり、ぴょっこり、楽しそうに歩いている感じだ♪

それ以来、あだ名が「ぴょっこりさん」になったとか。

自分は、なぜこんな歩き方なんですかね??
PTの国家試験に合格する前に、自分でなおしたいです!!
ハラプリ先生、評価と問題点とトレーニングを全部教えてください!!(丸投げ)

PTだったら、自分の歩き方について、自分で理解しておきたいね。
勉強に身の入らない、お年頃のかわいそうな学生さんのために、5分で臨床推論を立て、評価し、トレーニングを提示せよ!!

【臨床仮説】

①立脚後期では踵が浮いているので、前足部荷重なことは間違いない。

前足部荷重には2つの条件がある。
距骨下関節回外」
「前足部の剛性」
である。

*距骨下関節回外とは?こんな動き。

③足関節を早期に底屈させるような動きは、足趾の伸展を促し、いわゆる「ウィンドラス機構」を強める働きであると考えた。

*「ウィンドラス機構」とは?下の図も見てね!
足指を背屈させると、足底腱膜が巻き上げられ、内側縦アーチが緊張します。
足部の剛性が高まる現象です。

④ではなぜ、早期よりウィンドラスを強めなくてはならないか?

⑤おそらく、内側縦アーチの低下により足趾伸展が少ないためであろう。

内側縦アーチとは??
足のアーチには、
①内側縦アーチ ②外側縦アーチ ③横アーチの、三種類があります。
アーチは、成長とともに高くなり完成します。
アーチにより、足底にかかる体重は、分散されます。
内側縦アーチは、土踏まずを形成しています。
踵骨~距骨舟状骨~内側楔状骨~第一中足骨にかかります。
後脛骨筋・前脛骨筋・長母指屈筋・長指屈筋・母指外転筋が、アーチを維持します。

まずは視診で踵骨の傾きを確かめ、また、内側縦アーチの維持に必要な筋である、長母指屈筋、後脛骨筋の筋力を評価する。

ウィンドラス機構

PTハラプリのハラプリポイント

「外反偏平足」とまでは言えないが、内側縦アーチの低下は、よく、起こります。

解剖学的に(相対的に考えると)、「中足骨背屈位+足趾屈曲位」であるということを覚えておいてください。

よく、内側縦アーチの低下に対してアーチパッドを入れたりします。

これは、解剖学的、運動学的に説明すると「中足骨底屈+足趾伸展」を作り、ウィンドラス機構を強め、前足部荷重を促すために行うのです。

【評価】

①後方から症例の足部を視診すると、踵骨が外反位(距骨下関節回内)である。
足部の内側から見ても、内側縦アーチの低下が伺われた。

②足趾屈筋、後脛骨筋のMMTは㊨4/㊧5であり、本人からは「なんか右の方が弱い感じ」との言葉があった。

③足部をよく観察し、かつ、触診すると、足底が右の方が痩せていて、足に厚みがない。

*右の方で伸びあがりが強いのは、この筋力差によるものか。そう考えてみると、違和感はなく、すっきりと現象を説明できる。

【トレーニング】

方針➡➡➡内側縦アーチを形成する、母指屈筋や、後脛骨筋を強化する。

①タオルギャザー(タオルなしでオッケー)  5分/1日

タオルギャザーの自主トレイラストタオルギャザーの自主トレ

しかしながら、症例は学生であり、まじめに自主トレをやりそうにない。

加えて、以上のトレーニングをしても、歩容が変わらない場合も十分ありうるな、と考える。

なぜなら、筋力が弱い右だけでなく、左でも、少し伸びあがりが起こっているからである。

アーチを形成するのは、実際、筋だけではなく、靭帯や、足底腱膜などの軟部組織も含む。こういった組織が「伸びて」しまっていたら、筋力強化だけで変わるだろうか?

その場合は、アーチサポートを入れてみようと思う。

ぴょっこりさん・・・・・じゃなかった、学生君には、以上を指導した。
がんばって勉強してね!!

ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑧<終わり>

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