5分で臨床推論

第12回:正座が出来なくて困ってます

PTブログ:ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑫

ハラプリ
ハラプリ

皆さん、お元気ですか?
こんにちは、ハラプリです解剖学と運動学から患者を診ることを心掛けています。そこから逸脱すると、論点が「もやっと」してしまうからです。

運動学・解剖学は「1+1=2」の世界です。自分にとっては「すっきり」するんです。

症例が体現する現象を、とことん考えると、「これ以外には、ない。ああ、すっきりした」ところまでたどり着くことがあります。

(なお、このブログは事実をもとにしておりますが、フィクションです。)

【症例】

20代の男性。

正座ができなくて困っている。

正座をしようとすると、左膝の膝窩部にズキズキと痛みがでるため、お尻を右側に移して荷重してしまうという。

今日の新患はどんな人物なのか・・・・。私のよく知っている人だと、Drは言っていたが・・・。

ヘビトカゲ
ヘビトカゲ

(後輩。筋トレマニアの九州男児。趣味:筋トレ。あだ名:ヘビトカゲ)

やあ、痛くてたまらんですたーい、正座ができんでごわす!!

ハラプリ
ハラプリ

(声がでか・・・・・)
なんだ、新患ってちみか??
正座ができないと業務に支障が出るね。

ハラプリ
ハラプリ
ヘビトカゲくん、いつ頃から痛くなったの、キッカケはあつたの?
ヘビトカゲ
ヘビトカゲ
高校の部活を辞めて、シバラクシテカラデスターイ。

でも正座できんと、今度、地元で開かれる秘密の会議で困るんですたーい、ハラプリさん、何とかならぬでごわすか?

ハラプリ
ハラプリ
(・・・・・正座で行う秘密の会議ってなんだ?)

歩容は正常歩行で、痛みもなく問題がない。

左立脚では、足部が少しtoe inだ。

正座をするために深く膝を曲げて荷重すると、ズキズキ痛むという。

そのために、臀部を右側にずらし、徐々に「女の子座り」みたいになってしまう。

ハラプリ
ハラプリ
(筋肉声デカ九州男子が「女の子座り」とは、ちとイタイ・・・・。)

部活はバトミントンをやっていたらしい。

バドミントンを止めて、しばらくしてから正座が出来なくなってきた。

最近、痛みが強くなってきて、全く正座ができなくなった。

膝の整形外科的テストでは問題がなかったとのこと。

著明な筋力低下もない。

 

腰かけ座位での大腿部と下腿部とのアライメントをみると、矢状面では左の脛骨粗面が、右と比べて前方に突出している。

前額面ではとくに特徴がない。

 

さて。

 

九州土産と言えば、銘菓ひよこであろうか。カステラであろうか?

桜島大根かも知れない。

け、決してお土産を期待しているわけではないが、五分で臨床仮設をたて、評価し、トレーニングを指導してください!!

【臨床推論】

①痛みの出方(正座をしようとすると、左膝の膝窩部がズキズキと痛む)からすると、膝関節後面への圧迫ストレスによるものと考えられる。

部位からすると、半月板が疑わしい。

半月板には「前角」、「後角」という痛みを出しやすい組織があるのだが、ここへのメカニカルストレスが痛みを出すと考えられる。

②しかしなぜ、半月板の後面ストレスなのか?

図の黄色の矢印を見てみよう。(膝屈曲時には、半月板後面ストレスがかかる)

 

③(上図より)、半月板は、伸展で前方移動、膝屈曲で後方移動する。

膝関節屈曲運動をする際に、大腿顆部は後方へ滑るのだが、この時、大腿顆部に合わせて半月板も後方に移動する。

④しかし、症例は脛骨の前方変位がある。

これは、大腿骨顆部が必要以上に後方に位置しているということである。

顆部と半月板の「かみ合わせ」が上手くいかず、後角へのメカニカルストレスが加わり、痛みが出た可能性はないだろうか。

⑤また、膝関節は屈曲では下腿内旋伸展では下腿外旋(screw form rotation)する。

そして、下腿は内側を軸に回旋する。

そのため、外側が大きく動くことになる。

なぜ外側が大きく動くのだろう?

内顆と外顆の転がりの違い(形状の違い)を見てみよう。

なんらかの原因で、下腿の内旋運動に制限があるところに正座をすることによって、外側半月の曲面と大腿骨顆部が噛みあわなくなり、外側半月の後方が圧迫される可能性があるかもしれない。

⑥では、症例の下腿内旋運動を評価してみよう。

 

【評価】

・腰かけ座位で下腿の内旋運動を自動的に行わせたところ、明らかに左の方が内旋しない。

・改めて、膝関節屈曲の筋力をみると、MMT㊨5/4㊧、触診では、左の内側ハムストリングスが柔らかく、軽度の筋緊張低下を認めた。

・このことより、症例はハムストリングスの筋力低下によって、膝関節のアライメント不良が生じたと考えられる。

 

【トレーニング】

方針:内側ハムストリングスの筋トレを行い、ハムストリングスの緊張を高め、膝関節を正常な位置に戻す。

下記の運動を5分/1日  ×1セット

座位での膝屈曲右の自主トレ

 

ハラプリ
ハラプリ
<PTハラプリのハラプリポイント>

しかしなぜ、部活を辞めてから痛みが出たのか。

バドミントンは踏み出しの強さがスピードにつながる競技です。

強い踏み出しには、大腿四頭筋と下腿三頭筋のパワーが必要であり、踏み出しを強くするにはtoe in である方が都合がいい。

症例は左がtoe in であった。

Toe inで踏み出すためには下腿が内旋する(試してみてください)が、それを押さえるために、下腿を外旋する筋(外側ハムストリングス)の緊張を強めていたのかもしれない。

症例には左下腿の内旋制限があったことからも、この現象は納得できる。

バドミントンをやっていたころは、大腿四頭筋、内側ハムストリングスとも適度に鍛えられ、問題がなかったのであろう。

バドミントンを辞めて大腿四頭筋の働きが優位となり(筋トレマニアで、四頭筋トレーニングばかりやっていたから)、内側ハムストリングスが低下して痛みが出たのではないだろうか。

ハラプリ
ハラプリ
僕の頭の中で、すべてつながったよヘビトカゲ君。

下腿が前方偏移しているのを見た時点で、大腿四頭筋の過度な緊張か、反対に内側ハムストリングスの機能低下を疑ってみれば、もっと早く推論できたなあ、おれもまだまだ甘いよ。

(と、ちょっと謙遜してみたりして・・・・)

 

ヘビトカゲ
ヘビトカゲ
わー、ハラプリさーん、5分で治ったですたーい、ハグさせてくれですたーーい!!

 

 

ぐぎっっ!!ぐぎぎぎっっ!!

ぐごごごげ!(死亡)

次回に続く・・・・・・のか??(続きません)( ´艸`)

<終わり>

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