5分で臨床推論

第14回:肩が痛くて夜中に目が覚めてしまう

解剖学と運動学から患者を診ることを心掛けています。

そこから逸脱すると、論点が「もやっと」してしまうからです。

PTですが、オーダーさえあれば、脚や腰だけでなく、肩、手、肘、指、頸、便秘、嚥下などなど、何でもやります。

ハラプリ
ハラプリ
こんにちは、PTハラプリです。

某施設で勤務しております。

僕もフィクションです。

実在しません。しませんてば💦

(なお、このブログの症例内容も事実をもとにしておりますが、フィクションです💦)

【症例】

当施設に通う、高齢の男性。
軽度の左片麻痺あり。
以前から左肩の痛みがあったが、最近はいわゆる「夜間痛」がひどくなり、夜中に何度も目が覚めてしまうとのこと。

うちの施設のOTから、
「寝るときは肘の下に枕などを入れるといいですよ、それで様子を見てくださいな。」
と指導され、症例は早速、言われたことをやり始め少しは良くなった。
しかしながら・・・・・。

「やっぱり痛くて、目が覚めちゃうんですよねえ、ハラプリさん、どうにかならないですか?」
ハラプリ
ハラプリ
(・・・・・・そのOTさんは、最近辞めちまったわいの。どうすんだよ、施設長!
施設長も会議に行っちゃったし・・・・・。)
ハラプリ
ハラプリ
「えっと、そのOTさんからは、どういう指導をされたんですか?」
「こんな感じで寝ています。」
(と、ベッドに寝て左腕を伸ばし、肘の下に枕を入れて見せた。)
「でも、時間が経つと、肩の付け根と奥のほうがシクシク痛くなって。
肩も上がんないし、肘も曲げられないんです。」

肩甲上腕関節の前面と、関節の奥の方の周囲とに、圧痛と張りがあると言う。
肩の自動運動に制限が見られるが、他動的ROMでは制限はない。
触診では、上腕二頭筋が緊張亢進している。

ハラプリ
ハラプリ
(・・・・・ああそうか。よくあるあれだな・・・・)

さあ、ハラプリが考えた「よくあるあれ」とはなにか?
五分で臨床推論をたて、評価し、指導せよ!!

【臨床推論】

①まず、痛みの場所を確認しよう。

(A)肩甲上腕関節前面(夜間痛)
(B)上腕二頭筋長頭とその周囲(圧痛)
(C)肩甲上腕関節の奥(夜間痛)

 であった。
 
②このこのことから、いちばん疑われるのは、夜間、左上腕のポジショニングの仕方が悪いことから生じる「腱板疎部」へのメカニカルストレスである。
(腱板疎部は自由神経終末が多く、伸長刺激で痛みを起こしやすい部位である。)

③腱板疎部の伸長をカバーするために、上腕二頭筋長頭が過緊張を起こしたと考えられる。

④すなわち、肘や肩の自動運動の制限は、この上腕二頭筋の疼痛による運動制限と考えられる。

⑤なぜ肩の自動運動が制限されているかというと、上腕二頭筋長頭には、肩関節屈曲時に「サプレッサー機能」があるからである。「サプレッサー」については、今後やりますね!!

ハラプリ
ハラプリ
<PTハラプリのハラプリポイント>

腱板疎部(Cuff sparse part)とは?

あまり聞きなれない単語かも知れません。

腱板疎部は、棘上筋腱と肩甲下筋腱の間の隙間を言います。(下の図をクリックして拡大して見てね)

肩甲上腕関節の関節包は、基本的には、腱板筋(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)でおおわれています。

前記の2か所は、関節包や上上腕関節靭帯、中上腕関節靭帯などで覆われています。(靭帯といっても薄い膜状の軟部組織なので、負荷がかかると炎症を起こしやすいのです。)

また、腱板疎部は多くの自由神経終末(弱い痛みを大脳へ伝える感覚受容器)があるので、通常よりも痛みを起こしやすい場所といえます。

上腕二頭筋腱長頭や烏口上腕靭帯はこの弱点部位を補強するように走行します。

<臨床推論続き>

⑥(C)肩甲上腕関節の奥(夜間痛)について考えてみよう。

肩甲上腕関節の奥の痛みは、「関節包内圧の上昇」が考えられる。

ポジショニングが悪いと、腱板疎部へのメカニカルストレスにより、腱板筋および軟部組織へ負荷がかかる。

これが、肩峰下滑液包や上腕二頭筋長頭下滑液包への負荷となり、Weitbrecht孔(ヴァイトブレヒト孔)の機能不全(もしくは炎症)を生じさせたと考えられる。(ヴァイトブレヒト孔については、下の図をクリックして拡大して見てね)

*Weitbrecht孔ってなあに?
肩甲下滑液包と、肩甲上腕関節腔をつなぐ孔です。拘縮した肩では、肩甲下滑液包と肩甲上腕関節腔との交通が、遮断されている可能性があります。そうなると、内圧調整がうまく行きません。

Weitbrecht孔は関節包へとつながり、関節包内圧の調整を行うため、機能不全が生じることで関節包内部の圧力が上昇し、疼痛が出現したと考えられる。

このように考えるとスッキリする。

⑥では、症例はOTにポジショニングを教わって、「肘の下に枕を入れて、寝た」のに、痛みが残ったのは、な~んでか??

これについては、ポジショニングがどうだったか評価してみよう。

【評価】

・ポジショニングは、こうやっていた。

・肘関節伸展位。肩関節は軽度外旋位

【臨床推論リセット】

①指導されたポジショニングで、腱板疎部への刺激や関節包内圧の上昇は「それなりに」抑えられた。
そのため「少しは良くなった」。

②しかし、肘が伸びた状態でのポジショニングだったため、肩関節前面の組織(筋、血管、その他の軟部組織)が伸長され、筋緊張が亢進した状態が続き、疼痛が残存した可能性がある。

【プログラム】

・ポジショニングの指導
柔らかいクッションを2か所(肘の下と腹の上)つかって
ポジショニングしていただくこととした。

*コピー用には、こちらをどうぞ!
(イラストをクリックして、コピーをしてくださいね♥)

肩のポジショニングの自主トレイラスト肩のポジショニング
肩のポジショニングの自主トレイラスト肩のポジショニング

・ハラプリが「よくあるあれ」と言ってたのは、肩の痛みでポジショニングする時に、肩の下にはクッションを入れるが、肘より先は「意外と無造作」であることが「よくある」からです。

・ただ、こういう夜間痛については、分かっていないところも多いようです。

・他にも、骨頭が血流不全を起こしているという説もあります。

上腕骨頭を栄養する血管(前上腕回旋動脈、後上腕回旋動脈)が、肩関節周囲の靭帯(烏口肩峰靭帯や上関節上腕靭帯など)、関節包、肩関節腱板筋などの緊張により、血流不全を起こしているというものです。
このとき、上腕骨の内圧が上がることによって、肩の疼痛が出現するとのことです。

 

「ハラプリさん、ハラプリさんの言うように、100均で買ったクッションを抱っこして寝たら、翌日まで寝られたんですよ!うさぎさんのぬいぐるみですけどね!」
ハラプリ
ハラプリ
(施設長さん、はやくOT雇ってくれないかなあ・・・)

<終>

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