5分で臨床推論

第18回:長い間、足背が痛い。

PTブログ:ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑨

ずっと痛みを我慢していることはありませんか?

リハビリの人に相談してみませんか?

ハラプリ
ハラプリ
こんにちは。PTハラプリです。
解剖学と運動学から患者を診る、そこから逸脱しない、ということを心掛けています。
(なお、このブログは事実をもとにしておりますが、フィクションです。)

さて、今回の症例は・・・・・。

【症例】

60歳代の男性。

いつ頃からかは忘れたが、右足背に痛みを感じていたという。

「ハラプリさん、こうやると痛くて、
こうやると痛くないんですよ」

右足関節を自動的に背屈させる時、外返し気味に背屈させると痛みがなくて、内返し気味に背屈させると、足背に「ズキン」とした痛みがあるという。
ADLで困るのは、階段を上るときの痛み。

最近、生活に支障がでてきたとのこと。

「団地の5階に住んでるんですが、エレベーターがないんですよ。
外に出るのはまあ良いんだけど、帰りに階段を上るのがおっくうでね。」
ハラプリ
ハラプリ
「痛みが出るのはどのあたりですか?
指で指してみてください」

症例が指さすのは、足背内側の舟状骨の辺り。
圧痛はなく、他動的な背屈では疼痛が出ない。
自動的な背屈・内返しでのみ疼痛が起こる。

ハラプリ
ハラプリ
「ちょっと階段を上り下りしてください」

痛みが出るという、階段を上るときの足部アライメントを観察すると、症例は、両側とも足関節を内返し気味についている。

ハラプリ
ハラプリ
「・・・・・・なるほど、わかりました。
お任せください!(きりっ)」

・・・・・本当?
それだけで、なにがわかるんですか?ハラプリ先生・・・。
ただ、「分かったふり」をしているんじゃないの・・・・?

ハラプリ
ハラプリ
「どきっ!!
そ、そんなことはないぞ・・・・・!!
私は知ったかぶりなど一度も・・・・・・、
げほんげほんげほん。」

・・・・・ふふん。
まあ、5分で臨床推論をたて、評価し、トレーニングを指導してみてくださいよ。
ふふん。

【臨床推論】

①症例は、一定の動作で痛みを出している。
一定の動作で生じるメカニカルストレスを特定すれば、アプローチができると思われる。
②指をさす場所にある組織は、血管、神経、軟部組織、伸筋支帯、長趾伸筋や前脛骨筋の腱(腱鞘)、骨などがある。
ズキンズキンと脈打つ痛みや放散痛ではないので、血管や神経ではないと思われる。
③他動運動では出てこないので、骨による軟部組織の挟み込みによる痛みではないだろう。
「内返しの自動運動=内返し筋の筋収縮」で起きている。
このことから、内返し筋の主動作筋である前脛骨筋の腱鞘と、下伸筋支帯との間での「こすれ」で痛みが出ているかもしれない。
内返し背屈は前脛骨筋の作用なので、違和感はない。

ハラプリ
ハラプリ
「しかし、なぜ『こすれて痛み』が起こるのか?
通常は腱鞘と伸筋支帯とでは、こすれても痛みは出ない

のに・・・・?」

⑥足関節の背屈では、距腿関節は「転がり」、「後方すべり」運動をする。

この際、関節面での距骨の後方すべりが少なければ、距骨が前脛骨筋腱を前方に押し、下伸筋支帯での「こすれ」を強める。
距骨の後方すべりを抑制する筋として、長母指屈筋がある。
この長母指屈筋は足関節に対しては「底屈、内返し」作用がある。
⑧症例は、何らかの原因で長母指屈筋の緊張が高く、内返しで距骨の後方すべりを押さえてしまった、ということが考えられる。

⑨では、なぜ長母指屈筋の緊張が高いのか。
長母指屈筋は、
A)内側縦アーチを形作る
B)「種子骨」の安定
などに深く関わる。

このA)やB)を形成する他の筋の機能が低下して、代償的に長母指屈筋が過剰に働き、過緊張になったのかもしれない。
それは評価してみよう。

【評価】

・後脛骨筋(内側縦アーチに重要な筋)の筋力低下はなかった
右の母趾外転がほとんどできなかった。
・左に比べて、右の母趾球の内側にアトロフィがみられた。

【臨床推論リセット】

①長母指屈筋に加え、母指内転筋、母指外転筋は「種子骨」のアライメントを保ち、前足部荷重や蹴り出しを助ける。
症例は母趾外転筋が筋力低下していたため、それを補うために長母指屈筋が過緊張を起こした。
③だから、足関節を背屈、内返しする動きで、長母指屈筋が過剰に働いてしまい、後方から距骨を押してしまい、結果的に前脛骨筋腱鞘と下伸筋支帯とのこすれを強め、それを繰り返すことで痛みが出た。
④では、母趾外転筋の筋トレを指導しよう

【トレーニング】

・足部の内転運動   30回 × 2セット/日

ハラプリ
ハラプリ

<PTハラプリのハラプリポイント>

症例は母趾外転が「動かない」が、しかし麻痺はないので、使ってなかっただけだと思われます。
やり方がわかれば、わずかに動くようになり、収縮が起こればできるようになると思われます。
では、どうやってトレーニングするか。
工夫と配慮が必要です。

母趾外転筋は足底腱膜に付着するので、足底腱膜とつながる筋を賦活しながら鍛えるとよいと思われます。
そのため、トレーニングは「足の内転運動」としました。

なぜかというと、下腿三頭筋は踵骨を介して足底腱膜とつながっているからです。

足底腱膜は足根骨群ともつながっています。

足根骨(楔状骨や舟状骨など)とつながる筋は前脛骨筋や後脛骨筋です。

このような、「機能的な連結」は、解剖学の教科書に出ていること(起始と停止)です。
うまく工夫できればいいと思います。

(ちなみに、この症例は上記の運動を行い始めて間もなく、母趾外転の自動運動ができるようになり、足背の痛みが改善し階段昇降が楽になりました。)

*(「ハラプリの5分で臨床推論を立てよ」では、臨床でよくみられる症例をデフォルメしながら書いてます。)

ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑱<終わり>

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