5分で臨床推論

第16回:移乗の時、右手で手摺りを把持することを嫌がる症例

PTブログ:ハラプリの5分で臨床推論を立てよ⑯

解剖学と運動学から患者を診る、そこから逸脱しない、ということを心掛けています。

症例は、おおむね自分が経験したものや、勉強会などで出た症例をデフォルメして書いています。

原案はハラプリが書きますが、OGAWA屋本舗さんがいつも面白く書き直してくれるので、助かります。
(*’▽’)

ハラプリ
ハラプリ
こんにちは。PTハラプリです。

本当のハラプリは、真面目な普通のPTですよ。

変なおじさんじゃないですよ。(*’▽’)💦

さて、今回の症例は・・・・・。

【症例】

施設入所中の高齢の女性。
車いすベースで、ADL介助である。
認知機能も低下しており、動作指示が入りづらい。
状況判断は可能なようだ。
麻痺はない。

問題は、トイレ移乗のときに、手すりに手を伸ばすのを嫌がることだそうだ。

手すりを持ってくれないので移乗の介助量が多く、立位をとるのに2人介助が必要だと言うのだが、最近、介護さんが気付いたことがあるそうで・・・・・。

<お昼休み>

ハラプリ
ハラプリ

(・・・我がリハ室のトラブルメーカー、ヘビトカゲ君と喜多島マヤオ君は、二人で食堂に行ったので、私は平和である・・・・。

このまま、何もない1日ならいいのに・・・・。)

 

・・・・さあ、食後の休憩でもとろうか・・・・と思ったら、第三のトラブルメーカー・介護福祉士のフジ山ミネ子が、なんかくねくねしながらやってきたぞ!!

逃げるチャンスを逃したぞ!!ハラプリピンチ!!

フジ山ミネ子
フジ山ミネ子

「ハラプリせんせ♥、
○○さんのことで相談なんですけど~。」

「1階のトイレだと、ぜんぜん手すりを持ってくれなくて
立つの嫌がるし、2人介助で大変で大変で!!」

「それでね~、ミネ子困っちゃってるんですよ~」

ハラプリ
ハラプリ
(そんなこと言われても、ハラプリも困っちゃう・・・・)
フジ山ミネ子
フジ山ミネ子

「でもお♥」

「2階のトイレだと、すんなり手摺り持ってくれるし、介助も少なくて済むことを発見しちゃったんです!」

「だから、ね、ハラプリさん、今から2階のトイレに連れてって欲しいの。」

「たのめますう?」

ハラプリ
ハラプリ

「えっと、これはミネ子さんの仕事では・・・。」

フジ山ミネ子
フジ山ミネ子

「ミネ子!!
いまから、餃子食べ放題ランチに行くから、時間ないの!」

「お願い、ハラプリさん!!
餃子がなくなちゃう!!」

ハラプリ
ハラプリ

「いや、餃子を優先しちゃいだめでしょ~!!」

「ミネ子さんが出来なくて、どうすんの~!!

「僕が今から五分で解決しますから、ミネ子さんが何とかするんですよ!!」

ぶつぶつ文句言ってるミネ子さんをなだめすかし、評価に入る。

ハラプリ
ハラプリ

(しかし、なんで1階だと2人介助で、2階だとそうじゃないのよ?)

1階と2階のトイレを確認してみよう。

1階でいつも使うトイレは、トイレに車いすで入っていくと、ちょうど右手で手摺りに手を伸ばすような位置取りになる。

右手で手摺りへリーチ動作を行うことは、頑固に嫌がる。

2階は逆で、左手で手摺りにリーチするような手摺りになっている。

こちらは嫌がらず手すりを把持し、立ち上がってくれる。

症例側の問題だろうか??

繰り返すが、症例に著明な麻痺はない。

なんで「2階じゃなければダメなのか」かを聞いても、いまいち納得のいく答えは返ってこない。

円背である以外は、これと言って座位姿勢に問題はない。

よくみると、左股関節が右に比べ軽度の内転位である。

触診では、左ハムストリングが緊張亢進している。

右手指や上肢、肩関節に疼痛はなさそうである。
(理解の問題で、疼痛を訴えないためよくわからないが。)

フジ山ミネ子
フジ山ミネ子

「実は、ハラプリ先生・・・・。
ここだけの話なんですけど・・・・。」

「2階ではいいのに一階ではダメなのは、」
(声のトーンを落とす・・・)

「妖怪のせいじゃないかといううわさもあるのよ・・・・。」

・・・・・はっ?

ハラプリ
ハラプリ

「またまた~、なんでも妖怪のせいにしちゃダメでしょ~!!」

「この間も、スタッフルームのおまんじゅうなくなったの妖怪のせいだって大騒ぎして、結局犯人はミネ子さんだったでしょ~!」

「そんなこと言ったらねえ、ミネ子さんだってドンヨリーヌそっくり・・・・、い、いや、げほんげほんげほん!!!

フジ山ミネ子
フジ山ミネ子
「・・・・・・は?」
ハラプリ
ハラプリ
「い、いや、なんでもない、ゴホゴホゴホ!」

しかし、不思議だ。

なーんでかフラメンコを踊りたくなる気分だ。

さあ、ミネ子さんが、餃子食べ放題に行きたくてイライラしているから、
5分で臨床推論を立て、評価し、トレーニングを立案せよ!!

妖怪退散!!

【臨床推論】

①問題は、右手でのリーチ動作のための体幹前傾ができないことである。
体幹前傾ができ、右手で手摺りが把持できれば、次の立ち上がり動作へつながる。

②左手で誘導すれば、手すりを把持して立ち上がってくれるので、移乗の意思はあるようだ。

③体幹前傾ができないことから、まず疑うのは股関節の屈曲可動域である。
有痛性の股関節屈曲可動域制限があれば、前方リーチを嫌がるのも無理はない。

④では、股関節を評価してみよう!!

⑤加えて、右手リーチでは体幹の左回旋、左手リーチでは体幹の右回旋が伴うから、回旋可動域に左右差がある可能性もある。

⑥体幹の回旋の左右差も評価してみよう!!

【評価】

・股関節のROM制限はなし。

・体幹の回旋可動域は、右>>左であった。体幹の左回旋を他動的に促そうとした際に、抵抗感があった。

ハラプリ
ハラプリ
(・・・・うーん、ということは・・・・・・)

さあ、ハラプリはどんな推論を立てるのか??

<次回に続く!!>

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